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2025.11.10
再エネ拡大の壁「出力抑制」をどう乗り越えるか?
- はじめに:なぜ出力抑制が必要なのか
○ 太陽光・風力が増えると起こる“電力余剰”問題
○ 系統容量と需給バランスの制約 - 出力抑制の仕組みと現状
○ 電力会社による出力制御の流れ
○ 九州や北海道で多発するケース
○ 事業者への影響(売電収入減少など) - 抑制リスクにどう備えるか
○ 蓄電池の併設による自家消費・ピークシフト
○ PPA・VPPとの組み合わせ
○ 契約形態(固定買取 vs 市場連動)の違い - 抑制回避の新たな取り組み
○ 系統増強(送電線・変電所整備)
○ AIによる需給予測とスマート制御
○ 余剰電力の水素製造・熱利用への転換 - 制度・政策の動向
○ 出力抑制ルールの変更(公平性確保)
○ 再エネ導入拡大に向けた政府の方針 - まとめ:出力抑制を“制約”から“機会”に変える視点
- はじめに:なぜ出力抑制が必要なのか
再生可能エネルギーの普及は、脱炭素化とエネルギー安全保障の両立を実現する切り札として世界的に推進されています。日本でも太陽光や風力の導入が急速に進み、特に太陽光は世界でも有数の設置容量を誇るまでに成長しました。
しかし、再エネの拡大には副作用があります。それが「出力抑制(カット)」です。これは、発電設備が稼働できるのに、電力系統の需給バランスや送電容量の制約により、発電を強制的に抑えられる仕組みを指します。
再エネは自然条件に依存するため、晴れた日や風が強い日には電力需要を大幅に上回る発電が起こります。電力は貯めにくく、需要と供給のバランスを保つ必要があるため、供給過多のときは発電を止めざるを得ません。これが「出力抑制」の本質です。
特に電力系統の脆弱な地域や、再エネ比率の高いエリアでは出力抑制が頻発しており、事業者にとっては売電収入の減少というリスク要因になっています。今後さらに再エネが拡大する中で、この問題をどう克服するかが大きな焦点となっています。
- 出力抑制の仕組みと現状
電力会社による出力制御の流れ
電力会社は、需給バランスが崩れる恐れがある場合、発電事業者に対して「出力抑制命令」を発します。これにより、太陽光や風力の発電所は一時的に出力を下げ、系統全体の安定を守ることになります。
抑制は原則として、発電量の多い再エネから優先的に実施されます。火力発電は出力調整が可能であるため、まずは火力の出力を下げて調整し、それでもバランスが取れない場合に再エネが抑制されるという順序です。
九州や北海道で多発するケース
日本国内では、特に九州と北海道で出力抑制が多発しています。これらの地域は日照条件や風況が良く、再エネ導入が急速に進んだ一方、需要が大都市圏に比べて少なく、送電線の容量にも限界があります。その結果、晴天や強風のときに電力が余り、抑制が頻繁に発生するのです。
例えば九州電力管内では、春や秋の中間期に需要が少ない日に抑制が集中しています。北海道でも風力の出力変動により、系統安定化のために抑制が行われています。
事業者への影響(売電収入減少など)
出力抑制は、発電事業者にとって大きな経済的打撃です。発電設備は投資額が大きく、売電収入を前提に事業計画が立てられています。抑制が頻発すれば、その分売上が減少し、投資回収が難しくなります。特にFIT(固定価格買取制度)下では、安定した収益を見込んで参入した事業者も多いため、想定外のリスクとして不満が高まっています。
- 抑制リスクにどう備えるか
蓄電池の併設による自家消費・ピークシフト
最も有効な対策の一つが、蓄電池の活用です。発電した電気をその場でため、需要が高まる時間帯に放電することで、抑制を回避できます。特に自家消費型の太陽光発電では、蓄電池を併設することで「昼に発電した電気を夜に使う」ことが可能になります。
また、法人施設や工場ではピークシフトにも有効で、電気代削減効果と合わせて経済合理性を高められます。
PPA・VPPとの組み合わせ
近年注目されているのが、PPA(電力購入契約)やVPP(仮想発電所)との組み合わせです。PPAでは需要家と長期契約を結ぶことで、発電した電力を確実に売却でき、抑制リスクを低減できます。VPPでは複数の分散電源を統合管理し、系統状況に応じて最適制御することで、抑制を回避しつつ収益を最大化できます。
契約形態(固定買取 vs 市場連動)の違い
FITによる固定価格買取は安定収益を見込める一方、抑制によるリスクが直撃します。逆に市場連動型(FIPや卸市場売電)は価格変動リスクはありますが、系統混雑や需給状況に応じた柔軟な運用が可能です。事業モデルに応じて、どちらの契約形態が適しているかを見極めることが重要です。
- 抑制回避の新たな取り組み
系統増強(送電線・変電所整備)
根本的な解決策は、送電インフラの強化です。大規模な送電線や変電所を整備し、発電地から需要地へ電気を送り届けられるようにすれば、抑制の発生は大幅に減少します。ただし、送電線の新設には時間とコストがかかり、地域住民との合意形成も課題です。
AIによる需給予測とスマート制御
短期的には、AIを活用した需給予測が有効です。気象データや需要パターンを精緻に分析することで、発電量と需要をより正確にマッチングさせ、抑制を最小限に抑えることができます。さらにスマートインバータやデジタル制御技術を組み合わせれば、リアルタイムで出力を調整でき、系統全体の安定性が高まります。
余剰電力の水素製造・熱利用への転換
電気をそのまま使わず、水素や熱といった他のエネルギー形態に変換する方法も注目されています。余剰電力で水を電気分解して水素を製造すれば、燃料電池車や産業用燃料として利用できます。熱利用に転換すれば、地域暖房や工場の熱源に活用でき、再エネを無駄にせず有効活用できます。
- 制度・政策の動向
出力抑制ルールの変更(公平性確保)
出力抑制は事業者間の不公平感を生みやすい問題です。特定の地域や事業者に負担が集中すると、投資意欲が低下しかねません。そのため政府や規制当局は、抑制ルールの透明性を高め、公平な負担配分を行う仕組みづくりを進めています。
再エネ導入拡大に向けた政府の方針
日本政府は「GX(グリーントランスフォーメーション)」戦略の中で、再エネ比率を大幅に引き上げる方針を掲げています。その実現には出力抑制の課題解決が不可欠です。制度改革と技術開発を一体的に推進し、再エネを主力電源として安定的に運用する体制を整えることが求められています。
- まとめ:出力抑制を“制約”から“機会”に変える視点
出力抑制は一見すると再エネの成長を阻む「壁」のように思えます。しかし、見方を変えれば、新しい技術やビジネスモデルを生み出す「契機」でもあります。
蓄電池や水素技術、デジタル制御やアグリゲーションなど、抑制を逆手に取った取り組みは、次世代エネルギー産業の成長分野です。制度整備と市場設計が追いつけば、出力抑制は単なる制約ではなく、新しい価値創造の出発点になり得ます。
再エネが真に社会の主力電源となるためには、この課題をどう克服するかがカギとなります。私たちは「抑制を減らす」だけでなく、「抑制を活かす」という発想の転換を持つことが求められているのです。
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