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2025.10.16
電力安定化のカギを握る「系統用蓄電池」の役割
はじめに:再エネ大量導入と電力系統の新たな課題
太陽光・風力の普及による系統不安定化問題
出力変動・周波数調整の重要性
系統用蓄電池の基本機能と役割
周波数調整・需給バランス維持
系統混雑緩和(送電線の容量不足対策)
余剰電力の吸収
電力会社・送配電事業者による導入事例
海外事例(米国・欧州での大規模導入)
ビジネスチャンスとしての系統用蓄電池
アグリゲーションビジネスとの関連
系統サービス市場(需給調整市場・容量市場)での収益化可能性
今後の展望と課題
コスト低減の見通し
長寿命化・大容量化の技術進展
制度面での整備課題
1.はじめに:再エネ大量導入と電力系統の新たな課題
世界中で脱炭素化に向けた取り組みが加速しています。その中心を担うのが、太陽光や風力をはじめとする再生可能エネルギーです。各国はエネルギー安全保障や温室効果ガス削減の観点から、再エネ導入拡大を国家戦略として推進しています。
しかし、再エネは従来の発電方式と異なり、自然条件に依存するため出力が不安定です。晴天時には太陽光が大量に発電される一方で、曇天や雨天では出力が大きく低下します。風力も同様で、風の強弱によって大きく変動します。このように「発電量を人為的にコントロールできない」ことが、電力システムに大きな課題をもたらしています。
電力は需要と供給のバランスが常に一致していなければなりません。供給が多すぎれば周波数が上昇し、需要に比べて供給が不足すれば周波数が低下します。周波数が一定範囲を外れると、送電網全体が不安定化し、最悪の場合は大規模停電につながります。再エネの大量導入が進めば進むほど、このリスクは増大するのです。
こうした背景から、電力システムの安定性を維持する「調整力」として注目されているのが系統用蓄電池です。再エネが引き起こす出力変動を緩和し、電力を安定供給するための重要なインフラとして、各国で導入が加速しています。
2.系統用蓄電池の基本機能と役割
周波数調整・需給バランス維持
電力系統における周波数は国や地域によって異なりますが、日本では50Hzまたは60Hz、欧州では50Hz、米国では60Hzと決まっています。この周波数が維持されるのは、需要と供給のバランスが保たれているからです。
ところが再エネの割合が増えると、突発的な発電量の変化により周波数が乱れやすくなります。従来の火力発電は出力調整に数分〜数十分を要するため、瞬時の変動には対応できません。ここで系統用蓄電池が登場します。バッテリーはミリ秒単位で充放電できるため、瞬間的な需給ギャップを埋め、周波数を安定させることができます。
系統混雑緩和(送電線の容量不足対策)
再エネの多くは地方に設置されますが、電力需要の大部分は都市部に集中しています。そのため、送電線に大量の電気を流す必要がありますが、送電容量には限界があります。発電量が送電能力を上回ると「系統混雑」が発生し、電力を十分に活用できません。
蓄電池を送電線の手前に設置すれば、混雑時に余剰電力を蓄え、需要が増える時間帯に放電できます。結果として送電インフラの効率利用が進み、再エネを無駄なく使うことが可能になります。
余剰電力の吸収
昼間に大量の太陽光が発電されても、需要が少ないと余剰が生じます。これをそのまま流せば電力価格が下がり、発電事業者の収益にも影響します。蓄電池は余剰をためて、需要が高まる夕方や夜間に放電することで、再エネ利用率を高め、経済性を向上させる役割も果たします。
3.電力会社・送配電事業者による導入事例
米国の取り組み
米国カリフォルニア州は再エネ導入の先進地として知られています。太陽光発電の急増に伴い「ダックカーブ」と呼ばれる需給の大きな変動が課題となりました。昼間に需要を大きく上回る発電があり、夕方には急激に火力発電を立ち上げなければならない状況です。
この問題に対処するため、数百MWh級の系統用蓄電池が導入されました。余剰電力を昼間に充電し、夕方に放電することで、火力発電の急激な稼働を抑制し、需給をスムーズに接続しています。
欧州の取り組み
欧州では再エネ比率が高いドイツや英国が先進的な取り組みを行っています。特に英国では、周波数調整を目的とした市場が整備され、蓄電池が重要なプレイヤーとなっています。
「ナショナルグリッド」と呼ばれる送配電系統では、1秒以下での応答が求められるサービスが存在し、蓄電池がその条件を満たす技術として評価されています。これにより、従来の火力発電では不可能だった俊敏な需給調整が可能になっています。
4.ビジネスチャンスとしての系統用蓄電池
アグリゲーションビジネスとの関連
複数の蓄電池をデジタル技術で束ね、一つの大きな発電所のように機能させる仕組みが「アグリゲーション」です。小規模な蓄電池であっても、集合体として運用すれば市場に参加できる規模の調整力を生み出せます。これにより、系統用蓄電池は単なるインフラにとどまらず、新たな収益源としての価値を持つようになっています。
系統サービス市場での収益化
欧州や米国では、需給調整や容量確保のための市場が整備され、蓄電池は調整力を提供することで報酬を得ています。系統安定化に貢献すればするほど収益が得られる仕組みであり、投資回収の道筋が明確になっています。
このように、系統用蓄電池は電力システムの安定に貢献するだけでなく、投資対象としても注目を集めています。
5.今後の展望と課題
コスト低減の見通し
リチウムイオン電池を中心に、蓄電池の価格は過去10年間で大幅に下がりました。今後も量産効果や技術革新によりコスト低減が進むと予想され、導入の経済性は一層高まります。
長寿命化・大容量化の技術進展
現行の課題は寿命と容量です。フロー電池や全固体電池といった次世代技術の研究が進めば、より長期間・大規模に使える蓄電池が実現し、系統用蓄電池の価値はさらに高まります。
制度面での整備課題
技術面だけでなく、制度設計も普及の鍵を握ります。蓄電池が市場で適切に評価され、投資を呼び込むためのルール整備が不可欠です。再エネを最大限活用するためには、制度・市場・技術の三位一体の発展が求められます。
6.まとめ:電力インフラを支える“見えない蓄電池”の価値
再エネが主力電源化する時代、系統の安定を担う存在は欠かせません。系統用蓄電池は、発電事業者や一般消費者の目には触れない場所で稼働し、電力の安定供給を支える“見えないインフラ”です。
その価値は単なるバックアップにとどまらず、電力市場における新しいビジネス資産でもあります。今後、技術進歩と制度整備が進めば、系統用蓄電池はエネルギー社会の中核的役割を担うことになるでしょう。
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